¡Hola! 前回は、メキシコ脱出に立ちはだかる「書類と管理事務所」の壁についてお伝えしました。
今回はいよいよ**「実録・下見編」**です。
日通(NXメキシコ)さんの担当者が自宅に来て、荷物量の確認をしてくれる「下見」。てっきり「何をどれくらい持っていくか」を確認するだけの、穏やかな作業だと思っていました。
しかしこの日見せられた「禁製品リスト」と、担当者の静かな「それもダメです」の連発が、私のメキシコ生活最後の記憶に深く刻まれることになるのです。
目次
- 下見当日:「荷物量の確認」のはずが……
- 第一の衝撃:ワイン31本、全滅
- 第二の衝撃:「消耗品・食料品は全部ダメです」
- 第三の衝撃:ストローまで?
- 第四の衝撃:ルンバのバッテリーも
- 結局、何が持っていけるのか
- まとめ:引越しは「捨てるプロジェクト」でもある
1. 下見当日:「荷物量の確認」のはずが……
下見当日、日通の担当者の方が自宅に来てくださいました。会社の引越規定量(船便〇cft、航空便〇kg)に収まるかどうかを確認し、梱包のアドバイスをもらう、そういう場のはずでした。
担当者の方は終始、穏やかかつ淡々とした口調でした。感情の起伏はほとんどない。ただ、私の荷物を見ながら静かに、しかし確実に「それはダメです」「これもダメです」を繰り出してくるのです。
プロフェッショナルの仕事ぶりとはこういうことか、と妙な感心をしながら、私はじわじわとダメージを受け続けていました。
2. 第一の衝撃:ワイン31本、全滅
最初の一撃は、リビングの片隅に鎮座していたワインコレクションに向けられました。
7年間のメキシコ生活で、チリ駐在時代の戦利品も加えながらコツコツと集めたこだわりの一本一本。国別に整理するとこうなります。
🇦🇷 アルゼンチン(16本) Chañares Estate 2018 / Marchiori Estate 2019 / Finca Bella Vista 2020 / Paraiso 2021 / Val de Flores 2020 / Nico by Luca 2018 / Judas Blend 2019 / Alae 2019 / Gran VU 2017・2018・2019 / Pedregal 2020 / Arcángel Israfíl 2020 / Nosotros 2016 / Judas Malbec 2020 / Judas Blend 2020
🇨🇱 チリ(6本) VIK 2021 / La Piu Belle 2021 / Don Maximiano 2018 / Don Melchor 2020 / Casa Real 2020 / Amayna Garden Blend 2019
🇺🇸 アメリカ(5本) Caymus 2021 / Overture(旧ヴィンテージ) / Overture 2022 / Kenzo Estate rindo 2022 / The Prisoner 2021
🇲🇽 メキシコ(1本) Espuma de Piedra
🇮🇹 イタリア(1本) Villarode
🇨🇦 カナダ(1本) Inniskillin Icewine 2023
……計31本。我ながら壮観なラインナップです。
「これはどうしますか?」と聞く私に、担当者は静かに答えました。
「アルコール類は持ち出し禁止です」
……31本。全滅。
「え、、、このコレクション、どうしよう」
VIK、Don Melchor、Kenzo Estate rindo、Inniskillin Icewine……。ただ飲むために集めたわけじゃない。あの旅の記憶、あの食事の記憶が1本ずつに詰まっているのです。それがまるごと持ち出し不可とは。
私にとって、現地のワインを買い集めるのはある種の「生活の楽しみ」であり「文化体験」です。それがごっそり持ち出し不可とは……。これはなかなか、堪えました。
【ポイント】 アルコール類(ワイン・ビール・スピリッツ等)はメキシコからの国際引越し荷物としての持ち出しが禁止されています。現地で消費するか、知人に譲渡するか、早めに「出口戦略」を考えておきましょう。私は泣く泣く、親しい同僚たちに引き取ってもらうことにしました。
3. 第二の衝撃:「消耗品・食料品は全部ダメです」
ワインのショックを引きずる私に、次の一撃が来ました。
キッチンを見た担当者が、続けます。
「食料品・調味料類も、基本的にすべてお持ちいただけません」
……え?
私が持っていこうとしていたもの、ざっと並べるとこうです。
- 醤油・めんつゆ・鍋の素などの日本の調味料
- インスタント麺やレトルト食品
- 娘が大好きなメキシコのお菓子
- ストックしていた化粧品・顔パック・シャンプー
- 日本から取り寄せた薬(市販薬含む)
マレーシアは東南アジアの中では比較的なんでも手に入る都市ですが、それでも「日本製のあれ」「メキシコのあれ」はなかなか現地では買えないものも多い。だからこそ、赴任前にまとめて持ち込もうと思っていたのです。
しかし現実は厳しい。消耗品・食料品は、引越し荷物としての搬送が認められていないのです。
【ポイント】 食料品・調味料・消耗品(化粧品・薬含む)も、メキシコからの国際引越し荷物として搬送できないケースがほとんどです。どうしても持参したい場合は、スーツケースに入れて「手荷物・受託荷物」として自分で運ぶしかありません。
4. 第三の衝撃:ストローまで?
そして、この日最もシュールな瞬間が訪れました。
担当者が、棚の一角に目を止めます。そこにあったのは、環境意識の高まりを受けてまとめ買いしていたストローのストック。プラスチック製のもの、紙製のもの、いくつかのタイプをまとめて購入していたものです。
「あ、これは……」
「消耗品になりますので、こちらもお持ちいただけません」
……ストロー。
ワインはわかる。食料品もわかる。でも、ストロー。
思わず「ストローもですか?」と聞き返してしまいました。担当者は表情を変えず、淡々と。
「はい、消耗品全般が対象となります」
なるほど、そういうことか。「消耗品」という括りは思った以上に広いのです。使い捨ての日用品はすべて該当する、と考えておいた方がよさそうです。
この瞬間、私の中で何かがすとんと腑に落ちました。引越しの禁制品とは「論理」ではなく「カテゴリ」で決まっているのだ、と。個別のアイテムに「これは大丈夫?」と聞いても意味がない。「消耗品か否か」「食品か否か」「アルコールか否か」、その分類で白黒がつく世界なのです。
【ポイント】 「消耗品」の範囲は広く、ストロー・ラップ・ペーパータオルなどの日用消耗品も対象になります。「これくらいいいだろう」は通用しないと思って準備しましょう。
5. 第四の衝撃:ルンバのバッテリーも
「もうそろそろ終わりかな」と思ったところで、担当者の目が、床に置いてあったルンバ(ロボット掃除機)に止まりました。
「こちらはお持ちになりますか?」
「はい、持っていきます」
「本体は大丈夫ですが、バッテリーは充電式リチウムイオンになりますので、引越し荷物としてはお預かりできません」
……バッテリーが、ダメ。
「じゃあ、バッテリーを外したらルンバは持っていけますか?」
「はい、本体だけであれば問題ありません」
バッテリー外したらいけんのかいっ!
思わず心の中でツッコミが炸裂しました(口には出していません、大人なので)。バッテリーのないルンバ、それはもはやただの円盤では……?
とはいえルールはルール。ルンバ本体は引越し荷物として船便で送り、バッテリーは別途スーツケースに入れて自分で手持ちすることになりました。現地でまた合体させれば元通り、なのですが、なんとも不思議な旅をさせることになってしまいました。
リチウムイオンバッテリーは発火リスクがあるため、航空便・船便を問わず引越し荷物としての搬送が原則禁止されているのです。ノートPCやスマホも本体に内蔵されているものはグレーゾーンになることがあるため、事前確認を忘れずに。
【ポイント】 リチウムイオンバッテリー(電動歯ブラシ・ロボット掃除機・モバイルバッテリー等)は引越し荷物としてNG。機器本体から取り外して、スーツケースに入れて手持ちするのが基本ルールです。
では一体、何なら持っていけるのか。整理するとこうなります。
6. 結局、何が持っていけるのか
✅ 持ち出しOK(一般的な目安)
- 衣類・靴
- 家具・家電(新品未開封でないもの)
- 書籍・書類
- 子どものおもちゃ・ベビー用品(消耗品でないもの)
- 電子機器・ガジェット類(バッテリー内蔵のものは要確認)
❌ 持ち出しNG(要注意カテゴリ)
- アルコール類全般(ワイン・ビール・スピリッツ等)
- 食料品・調味料・レトルト・インスタント食品
- 消耗品全般(化粧品・薬・洗剤・ストロー等)
- リチウムイオンバッテリー単体(モバイルバッテリー・交換用バッテリー等)
もちろん、国や引越し業者によって細かいルールは異なります。必ず担当者に「禁製品リスト」を事前に送ってもらい、持ち出したいものをリストアップして確認するのが鉄則です。
私のように「下見当日に現物を前にして初めて知る」という状況は、精神的ダメージが大きい(笑)。事前確認を強くおすすめします。
7. まとめ:引越しは「捨てるプロジェクト」でもある
今回の下見で学んだことをひと言で言うなら、**「海外引越しとは、持っていくものを決めるだけでなく、置いていくものを決めるプロセスでもある」**ということです。
31本のワインコレクションを同僚たちに引き取ってもらう段取りをしながら、これもまた「メキシコとの別れ方」のひとつだなと思いました。モノに宿る記憶を手放すことで、次のステージへの荷物が、少し軽くなる気がします。……ルンバだけは、バラバラで旅をさせることになりましたが。
次回は、マレーシア就労ビザ(エンプロイメントパス)取得の実録編。「申請中はマレーシアに入国できない?」「eビザの申請は最終滞在地から行う必要がある?」など、知らないとハマる落とし穴を実体験ベースで解説します。お楽しみに!

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